第168回 元気で長生き講座【2026年11月号】
~ファブリー病をご存じですか? 女性の方も検査が可能になりました~
皆さんは「ファブリー病」という病気をご存じでしょうか。あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、腎臓や心臓、神経など、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす遺伝性の病気です。腎臓の働きが徐々に低下し、透析が必要になることもあります。一方、現在では病気の原因に働きかける治療法があり、早期発見・早期治療が重要とされています1⁾。
ファブリー病は、α-ガラクトシダーゼA遺伝子(GLA)の変化によって、体内にある「α-ガラクトシダーゼA」という酵素の働きが、生まれつき弱かったり、ほとんど働かなかったりすることで起こります。この酵素は、細胞内の特定の糖脂質を分解する役割を担っています。酵素が十分に働かないと、糖脂質が少しずつ全身の臓器の細胞内に蓄積し、長い年月をかけて腎臓や心臓などの機能に障害を引き起こします1⁾2⁾。
症状には個人差があり、子どもの頃から運動活動の妨げとなる手足の末端の熱いような痛み、汗をかきにくい発汗障害、皮膚の被角血管腫、眼における渦巻き状角膜混濁、下痢・腹痛など消化器症状や難聴・めまいなど耳鼻咽喉科症状が現れる方もいれば、四肢末端痛は30歳以降に軽快することが多く3⁾、成人になってから腎機能の低下や心臓の異常をきっかけに発見される方もいます。腎臓では蛋白尿や腎機能低下、心臓では心肥大や不整脈などがみられ、若年性脳梗塞、末期腎不全や心不全を起こす場合もあります。そのため、原因がはっきりしない腎臓病や心臓病の背景に、ファブリー病が隠れていることもあります1⁾2⁾。
男性だけでなく、女性にも起こる病気です
ファブリー病は、X連鎖性遺伝形式をとり、X染色体上に存在するGLA遺伝子の変化によって起こります。以前は男性に症状が現れやすく、女性は症状が軽いと考えられていました。しかし現在では、女性でも腎臓や心臓などに重い障害が現れる場合があることが分かっています1⁾4⁾。
診断には、血液中の酵素の働きを調べる「酵素活性測定」などを用います。男性では酵素の働きが大きく低下することが多いため、比較的発見しやすい一方、女性ではファブリー病であっても酵素の働きが正常範囲に収まることがあります。そのため、女性では確定診断に際して、GLA遺伝子の病的な変化を確認する遺伝子検査が特に重要となります1⁾2⁾4⁾。
このたび本院では、ファブリー病のスクリーニング検査(病気の可能性を調べる検査)の対象を拡大し、これまでの男性患者さんに加えて、女性患者さんにも実施できるようになりました。本院では酵素活性測定によるスクリーニング検査を行い、確定診断のために遺伝子検査などが必要な場合には、外部の専門医療機関と連携して対応いたします。なお、女性ではスクリーニング検査の結果が正常でも、ファブリー病を完全に否定できない場合があります。
ファブリー病には原因に働きかける治療法があります
代表的な治療法が「酵素補充療法」です。これは不足している酵素を2週間に1回点滴で体内に補い、蓄積した糖脂質を減らすことで、臓器障害の進行を抑えることや症状、QOL(生活の質)や生命予後の改善を目指す治療です。本院でも、この酵素補充療法に対応しています3⁾5⁾。
また、GLA遺伝子の変化の種類によっては、「シャペロン療法」と呼ばれる内服薬による治療が可能な場合もあります。いずれも患者さんの病状や検査結果を踏まえ、適切な治療方法を判断します1⁾2⁾。
すでに透析を受けている方でも、ファブリー病の診断には重要な意味があります。透析によって腎臓の働きを補うことはできますが、心臓や神経などへの影響については、別途評価や管理が必要となるためです。また、遺伝性の病気であることから、家系調査や遺伝カウンセリングが望まれ、ご本人の診断がご家族の早期発見につながる場合もあります1⁾4⁾。
ファブリー病は決して多い病気ではありませんが、早期に発見することで、適切な治療や健康管理につなげられる病気です。本院では男性・女性ともにスクリーニング検査に対応いたします。ファブリー病について気になる方や、検査をご希望の方は、医師またはスタッフまでお気軽にお申し出ください。ご相談のうえ、検査をご案内いたします。
引用文献・参考資料
1)日本先天代謝異常学会 編.ファブリー病診療ガイドライン2020.診断と治療社,2021.
3)酒巻 裕一,丸山 弘樹.【透析患者の心臓病―診療の最前線を学ぼう】ファブリー病.臨床透析.2022;38(1):73-79.
DOI:10.19020/CD.0000002013
