人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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第98回 元気で長生き講座【2020年7月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~長時間透析は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を抑える可能性があります~

 

日本透析医学会(以下JSDT)では透析患者のCOVID-19の統計を行っています。6月12日時点の死亡率は全国と比較すると有意(P<0.01:Fisher’s exact test)に高いものの、地域別では九州・沖縄地区の罹患率が1.1%と全国トップであるにも関わらず、驚くべきことに死亡率0%で、残念ながら全国トップの東京地区より低い傾向(P<0.1:Fisher’s exact test)があります。九州地区は長時間透析実施施設が多いことで知られており、この差は透析時間の長さが影響しているのではと推察します。即ち、長時間透析実施により、たとえCOVID-19に罹患したとしても、死亡までには至らない可能性が考えられます。

 

出典:日本透析医学会:透析患者における累積の新型コロナウイルス感染者数(2020年6月19日付け)

 

1992年、フランスのCharra(シャラ)博士が、 長時間透析の金字塔と評される貴重な論文を、キドニーインターナショナル誌に発表し、1回8時間、週3回の長時間透析を実施した445名の治療成績の報告で表題は「Survival as an index of adequacy of dialysis」となっており、十分な透析治療を実施したかどうかを判断する基準は生存率である、と断定しました。シャラ博士は、長時間透析により、高血圧管理が良好となり、10年生存率75%及び20年生存率43%と、日本の約2倍の好成績を報告(Kidney Int. 1992;41:1286-91)しています。

長時間透析研究会会長に就任した九州の前田病院の前田利朗先生は、論文「6時間透析における生存率-20年間の経験から-」(日透医誌2010;25:95-100)にて、「1989年から20年間にわたって,本院のすべての透析患者に対して6時間透析を実施してきた.その生存率はJSDTの全国統計に比べて明らかにすぐれていた.長時間透析の場合,血圧は透析施行のみで正常化することが多いが,本院の6時間透析においても,降圧薬を必要としたのは全体の30%に満たなかった.心血管合併症の主要な危険因子である高血圧管理が容易で循環系に与える影響が少ないことが,6時間透析患者の生命予後を良好なものにしていると考えられる.」と執筆されておられます。

 

また本院へ臨時透析にいらしたこともある「しっかり透析のヒケツ」の著者としても有名な仙台の「かわせみクリニック」院長鈴木一之先生が日本透析医会誌にて頻回透析・長時間透析の10の利点を多くのエビデンスに基づき記載されておられ、最後の項目に最も重要な生命予後の改善/死亡の危険度の低下を挙げておられます。以前の第70回元気で長生き講座(2017年10月号)でも紹介いたしましたが、次頁にて改めてお伝えいたします。