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菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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第97回 元気で長生き講座【2020年6月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~降圧薬ACEI/ARB服用でCOVID-19は重症化せず、死亡率を下げる可能性が報告されています~

 

一部のメディアで、高血圧患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症しやすい、高血圧の治療に一般的に使われているレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系抑制薬(RAS抑制薬)のアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が予後を悪化させる懸念があるとの報道がありました。新型コロナウイルスが感染するには、細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2)に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが重要となりますが、ACEI/ARBはACE2の発現が増加した動物実験の報告があるため、これらの薬剤を使用している高血圧患者はCOVID-19を発症しやくなることや、重症化の懸念がありました。

 

これに対して、欧州心臓病学会(ESC)、欧州高血圧学会(ESH)、国際高血圧学会(ISH)は、「COVID-19を発症した患者がACEI/ARBの使用を変更・中止する明確な根拠はない。患者はこれらの薬剤の使用を継続するべきである」とする声明を発表しました。日本高血圧学会や日本腎臓学会も、現時点ではこの見解がもっとも妥当と考えています。そのため患者様におかれましては、現時点では従来通りの適応に沿った高血圧治療を継続してまいります。ご理解の程お願い申し上げます。
ISHは次の4つの重要なポイントを強調しています。

 

1.今のところ、高血圧のある患者が正常な血圧の患者に比べてCOVID-19になりやすいとは言えない。60歳以上の高齢者はCOVID-19に感染しやすく、高齢者には高血圧症が多いためにそう見えるが、高血圧が原因となっているわけではない。
2.新型コロナウイルスについては、ACEI/ARBは、感染に対する感受性を改善あるいは悪化させることも、感染した患者の結果に影響を与えることを示す臨床報告はない。
3.現状では、ACEI/ARBについて否定的、あるいは肯定的になるような十分なデータは示されていない。そのためISHは、高血圧のある患者を治療する際に、ACEI/ARBについては通常通り、適応に応じ使用継続を強く推奨する。COVID-19に関する懸念に影響され処方を変更すべきではない。
4.いずれCOVID-19に対して降圧治療が影響を与えることが明らかになり、治療指針を変更する必要が生じてくる可能性もあるが、今のところは、そうしたリサーチデータは報告されておらず、現状の高血圧診療ガイドラインを変更する必要はない。

 

(参考)各学会の声明文
欧州心臓病学会欧州高血圧学会国際高血圧学会日本高血圧学会

 

一方で、ACE2が肺損傷に対して防御機能を持つことを発見したオーストリアのグループが、臨床使用可能な可溶性人工ACE2を作成し、競合阻害により、ベロ細胞への新型コロナウイルスの感染を防止出来る事、及び人工の血管や腎臓への新型コロナウイルスの感染を抑制出来る事を報告しました(VanessaMonteil,HyesooKwon,PatriciaPrado,etal.Cell.2020;181(4):905–13.)。実際、中国での後ろ向き研究で、高血圧合併COVID-19入院患者1128名におけるACEI/ARB使用と死亡率の関連が検討され、ACEI/ARB使用群(188名)の死亡率3.7%で非使用群(940名)9.8%より有意(P=0.01)にむしろ低値で、年齢・性別・合併症・内服薬で補正し比較しても、ACEI/ARB使用群の死亡率は非使用群に比べ58%も有意(P=0.03)に低い結果で、ACEI/ARB使用がCOVID-19患者における死亡リスクをむしろ下げる可能性が報告(ZhangP,ZhuL,CaiJetal.CircRes.April17,2020)されました。

 

台湾国民健康保険研究データベースからのデータを用いた大規模な後ろ向き研究にて、末期腎不全患者の心血管(CV)死亡と全死亡を調査した結果、背景をそろえる傾向スコアマッチングにてACEIまたはARB(N=17,280)使用群と非内服(N=17,280)群の比較にてCV死亡と全死亡は、それぞれ非使用群より42%と53%も低いと一昨年報告(Hsin‐FuLee, Lai‐ChuSee, Yi‐HsinChan, et al. End-stage renal disease patients using angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers may reduce the risk of mortality:a Taiwanese Nationwide cohort study. Intern Med J2018;48(9):1123-32)されています。ACEI投与により肺炎が減少したとの報告もあり、当院では、降圧効果に優れ咳の頻度が最も少ないACEIのイミダプリルや、7年前の日本透析医学会学術集会・総会にて「アジルサルタンは血液透析患者のBNPを低下させる他RAS抑制薬からの切り替え」を菅沼が口演発表(菅沼信也.日本透析医学会雑誌.2013;46Suppl.1:791)しており、降圧効果に最も優れるARBアジルサルタンを多く用いております。