人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
腎内科クリニック世田谷
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第87回 元気で長生き講座【2019年7月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~異所性石灰化予防の為にも長時間透析等の透析量をしっかりと確保した透析をお勧めします!~

 

今年3月からの公立福生病院(東京都福生市)で起きた透析拒否に関する一連の報道は記憶に新しいことと思います。天皇陛下(現明仁上皇)の執刀医として知られる順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長が、平成3145日日刊ゲンダイヘルスケアに「積極治療を望まない透析患者にも向き合って説明を重ねるべき」とのコラム(https://hc.nikkan-gendai.com/articles/251175?page=2)を掲載されていますので一部をご紹介します。

 

「(前略)中には、透析を始めた後で急性心筋梗塞や脳出血を起こしたり、進行がんが見つかって手術などの本格的な治療が必要になった際、「透析でここまで生きてきたから、もう治療は結構です。手術が成功しても、また透析をしなければならないんでしょう?」と積極的治療を望まない患者さんもいます。しかし、それでも医者としては、治療の重要性や有効性を手を替え品を替え説明するべきです。それも1人ではなく複数の医療者がそれぞれ患者さんと向き合い、きちんとした正しいエビデンスに基づいて見解を示す必要があります。それを大前提にしたうえで、自分の経験談を付け足しながら「手術で病気がよくなれば、これから透析も進歩するから負担が少なく暮らせますよ」といった説明をすると、思い直して積極的に治療を受けようという気持ちになる患者さんもいます。(続く)」

 

本院は「元気で長生き」をスローガンに抱え、患者様ができるだけ長く元気に暮らせるよう治療に努めております。オーバーナイト透析や在宅透析の実施により、ご自身のライフスタイルを充実し、時間をより有効活用できる術を提供していますので、天野先生のご意見には深く感銘を覚えます。

 

(一部、誤解を与える表現が記事内にありますので補足いたします。文中に『透析を行うと血管の壁にカルシウムとリンが沈着するため、血管が石のように硬くなる異所性石灰化が起こり動脈硬化が進みます。』との表記がございますが、正確には、『透析患者様におかれましては、不適切な治療や透析不足により血中のカルシウム(Ca)とリン(P)値が高くなると、血管の壁にCaPが沈着するため、血管が石のように硬くなる異所性石灰化が起こり動脈硬化が進みます。』 長時間透析等の透析量をしっかりと確保した透析を行う方が、特にP値が低下し、異所性石灰化が予防出来ます。透析液Ca濃度別透析前補正Ca×P積は本院で用いておりますクエン酸含有重炭酸透析液カーボスターで最も低値も2009年末の日本透析医学会(JSDT)統計調査結果「わが国の慢性透析療法の現況」にて報告されています。)

 

公立福生病院は東京都に対し、患者側から治療中止などの同意を得る際、説明文書に「同意撤回が可能」と明記する、病院幹部らが患者側とのやりとりを正確に記録しているか確認するといった業務改善策をまとめ報告書を提出しました。その後、JSDTは、女性は重篤な心血管系の合併症があり、透析を行うためのバスキュラーアクセスを確保することが難しく、血液透析を継続するのは臨床的に困難な状況だったと推測され、また女性は透析を中止する意思を示しているため、その意思は尊重されてよいとする声明をWebサイトで公表しました。ただし、女性は亡くなるまでの間に重篤な呼吸困難になり、いったんは治療再開を求めたとされるため、患者の意思を何度も確認すること、その過程を具体的に記録することが大切であるとも指摘しています。