第162回 元気で長生き講座【2026年5月号】
~ナフサと透析医療~
最近、ナフサの供給および中東情勢に関するニュースなどで「ナフサ不足」が取り上げられ、「透析に影響はないのか」と不安に感じている方もいらっしゃるかと思います。今回は、この問題が透析医療にどのように関係し、本院が現時点でどのように備えているかを紹介いたします。
ナフサは、原油(石油)を精製して得られる油で、プラスチック製品の原料であり、日本は多くを中東に依存しています。透析医療では、血液浄化器(血液透析(HD)におけるダイアライザおよび血液透析濾過(HDF)におけるヘモダイアフィルタ)、血液回路、注射器、穿刺針の一部、廃棄物を処理する専用ボックス(ハリクイやメディカルペール)、感染性廃棄物用の袋、血液透析装置の洗浄剤容器、本院でも行っております在宅透析(PD/HHD)においては、腹膜透析(PD)におけるバッグや在宅血液透析(HHD)で使用される液剤型透析液の容器など、多くのプラスチック製資材を使用しているため、供給が滞ればこれらの生産に影響が出る可能性は否定できません。
しかしながら、現時点で本院を含む各透析施設にて治療に支障をきたすような供給不足は生じておらず、冷静に対応することが重要です。透析は生命維持に直結する医療であるため、いかなる状況でも治療を継続できる体制を整えることが最優先です。本院では「透析医療を止めない」ための備えとして災害対策に加え、以下の取り組みを行っております。
・供給ルートの多角化:複数のメーカーや卸業者と連携し、代替品を確保できる体制の構築
・在庫管理の徹底:不足が生じないよう重要資材の在庫の確保と、使用期限に基づいた適切な管理
・適正な備蓄と使用:医療資源は社会全体で共有されるべきものであり医療体制全体の崩壊につながる可能性がある過度な買い占めは行わず、資材の適正な使用
日本女医会や菅沼も所属しております公益社団法人東京都医師会などの医療関係団体から、患者さんの命に関わる医療資材の確保を依頼する要望書の提出1)が、上野賢一郎厚生労働大臣に先月23日行われています。政府の石油備蓄も国内需要の数か月分は既に確保2)されており、政府はホルムズ海峡を通らないルートでの原油の代替調達の拡大を進めており、先月24日高市早苗首相は、首相官邸で開かれた中東情勢に関する関係閣僚会議で重要物資の確保状況に関し、「透析資材について当面の安定供給を実現した」3)と説明しています。
以上より、透析医療資材の供給に直ちに影響が出る状況ではなく、患者さんにおかれましても、現段階で透析治療が受けられなくなるといったご心配は不要です。本院も引き続き必要な情報収集に努め、上記対策を継続してまいります。
【参考】
1)上野厚生労働大臣への「中東情勢に伴う医療用資材等の安定供給に関する要望書」提出について(生きるテンポを、社会のらしさに。一般社団法人ピーペック)
2)経済産業省・資源エネルギー庁(石油備蓄に関する情報)
3)高市早苗首相、透析用チューブ「9月まで供給量確保」(日本経済新聞)
