人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

腎内科クリニック世田谷
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

菅沼院長の元気で長生き講座
course

  • 院内写真1
  • 院内写真2
  • 院内写真3
  • 院内写真4
  • 院内写真5
  • 院内写真6
腎内科クリニック世田谷
腎内科クリニック世田谷
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14
  • 予約・お問い合わせ

    03-5969-4976受付時間:9:00~17:00(月~土)

第160回 元気で長生き講座【2026年3月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~日々の歯みがきと歯科への定期受診をお勧めします~

 

「歯が痛くないから、歯医者には行っていない」

そのように思っていませんか。

 

近年、歯周病(歯周炎)が単なる“お口の病気”ではなく、全身の健康、とくに感染症や寿命とも関係している可能性が報告されています。透析患者さんにとっても重要であることが、国内外の研究から示されています。

 

歯周病は、歯ぐきに炎症が起こり、細菌が増える病気です。初期にはほとんど痛みがなく、自覚症状が乏しいまま進行することが特徴です。炎症が慢性的に続くと、歯ぐきの血管から細菌や炎症物質が血流に入り、発熱などの全身の炎症反応をもたらす可能性があります。

 

海外の研究では、透析患者さんにて歯周炎がある群は採血項目のCRPなどの炎症マーカーが高く、死亡リスクとの関連が示唆されています1。つまり、歯ぐきの状態は単なる局所の問題ではなく、全身に影響をもたらす可能性があると考えられています。

 

透析患者さんの死因の第一位は以前心不全でしたが現在は感染症です。免疫機能が低下しやすい状況では、慢性的な炎症や細菌の存在が感染リスクを高める可能性があります。その意味で、歯周病は「見えにくい感染の入口」の一つと考えられています。

 

では、日本の透析患者さんの実態はどうでしょうか。

 

兵庫県で行われた調査では、60歳以上の外来透析患者さん49名(平均年齢72.9±7.6,糖尿病患者さん38.8%)を対象に、口腔状態と口腔健康管理行動が自記式質問紙にて調べられました2。その結果、人の永久歯は28本ですが残存歯数の平均は16.2±11.7本、残存歯数20本以上の者の割合は51.0%で全国調査よりも少なく、やはり年齢が高いほど少ない傾向が認められました。また、歯みがき頻度は12回が42.9%と最も多く、歯科を「ほとんど受診していない」と回答した方が38.8%と最も多く認めました。

 

さらに、

・歯みがきが11回以下

・歯科定期受診がない

群は

・男性

・糖尿病を有する

・残存歯数が少なく10本未満

・義歯を有する

が多い傾向が見られました2。つまり、「痛みがないから受診しない」状況が、実際に多く存在していることが考えられます。

 

また、歯周病と認知症との関連も報告されています。歯周病菌や慢性炎症が脳とも関係する可能性が示唆されており3、口腔の健康を保つことが将来の認知機能低下の予防につながる可能性があると考えられています。

 

もちろん、歯科受診だけで感染症や認知症を完全に防ぐことはできません。しかし、リスクを一つ減らすことは可能です。

 

米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)の疫学研究のメタ解析にて、歯周病は心臓の病気を引き起こすリスクファクター(危険因子)のひとつである4ことが明らかとなっています。 関係がある心疾患は感染性心内膜炎と虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)で、Mikamiらが1万人を超える透析患者さんを対象とした調査の結果、歯科治療の受診にて感染症で多い肺炎が有意に少ないことや予防ケアの歯科受診で肺炎と心筋梗塞双方とも有意に少ない5ことを報告しています。

 

透析治療は、週3回以上きちんと通って頂くことで身体を守っています。同じように、歯科への定期受診も、合併症を減らし将来を守るための医療行動の一つです。歯科は「歯が痛くなったら行く場所」ではなく、「元気で長生き」するために通う場所と考えてみてください。

 

歯科受診の目安

 

・症状がなくても少なくとも36か月に1回は定期受診

・歯ぐきからの出血、口臭、歯のぐらつきがあれば早めに受診

・糖尿病のある方は感染症を来しやすく特に注意

・入れ歯使用中の方も定期的なチェックが必要

 

ぜひ必ず毎日歯周炎や虫歯予防の為にも歯みがきを行い定期的に歯科受診して頂きお口の健康を保つことも、日々の透析治療同様大切です。気になることがあれば、かかりつけ歯科医、主治医やスタッフにもご相談ください。

 

参考・引用文献

 

1)Khoueiry G, et al. Association between periodontitis and mortality in patients undergoing hemodialysis. Sci Rep. 2024;14:62735.

2)白石夕起子,小柴隆史,小西修二.透析患者の歯周病に関する口腔状態と口腔健康管理行動の実態.兵庫県透析従事者研究会会誌.2025;48:21-25.

3)国立長寿医療研究センター.歯周病と認知症の関連に関する研究報告.National Center for Geriatrics and Gerontology; 2023.

4)Yurong Leng, et al. Periodontal disease is associated with the risk of cardiovascular disease independent of sex: A meta-analysis. Front Cardiovasc Med. 2023 27;10:1114927. doi: 10.3389/fcvm.2023.1114927

5)Risako Mikami, et al. A Preventive dental care reduces risk of cardiovascular disease and pneumonia in hemodialysis population: a nationwide claims database analysis. Sci Rep. 2024;14:12372.