人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第137回 元気で長生き講座【2024年2月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)双方が流行しており、引き続きの感染対策とワクチン接種をお勧めします~

 

令和6125日東京都のCOVID-19の最新データが公表されました。1月に入り患者報告数は増加傾向にあり(図①-11)、入院者数も1500人を超えています。

 

 

ウイルス株は、変異株「JN.1」に置き換わりつつあります。「JN.1」はオミクロン株の一種「BA.2」が変異したものです。COVID-19罹患後でも、これまでのワクチンを打っていたとしてもかかってしまうこともあるようで、病原性はあまり高くないと言われているものの、東京都では救急搬入数や入院者数が増えており、油断できません。昨年秋からのXBB.1.5対応ワクチンはJN.1にも効果がありますので、未だの方は接種をお勧めします。

 

昨年9月の日本透析医会の発表2)によると、第7波致死率2.2%、第8波致死率2.9%で、致死率は70歳以上で3.8%と高率で、一方70歳未満は 0.8%でした。第7波での一般の致死率0.1%未満ですので、透析患者の致死率は8倍以上と非常に高率です。オミクロン株 XBB 系統においても透析患者の重症化リスクや致死率は、一般の方と比べて非常に高率です。令和5年秋に開始されたXBB.1.5 対応ワクチンを接種すること、感染した場合速やかな抗ウイルス薬の投与を行うことが大切です。本院ご通院中の外来透析患者様におけるCOVID-19致死率は全国平均よりも低く、37.5℃以上の発熱時事前にお渡ししております抗ウイルス薬タミフル1C内服頂き、ご来院前に本院にご連絡を頂けますよう引き続きお願い致します。COVID-19と診断された際はラゲブリオカプセル8C/日計5日間内服もお勧めします3)

 

 

COVID-19に関する最近の論文をいくつか紹介します。

 

国際医学誌JAMAの本年15日号4)にて、COVID-19が原因で死亡するリスクが、ワクチン未接種者と接種者の間で比較した結果、デルタ株流行時と比べオミクロン株流行時の致死率は下がったものの、双方に共通しているのは、ワクチン未接種者はワクチン接種者に比べ、30才以上の年代では、COVID-19による致死率が数倍高い結果でした。重症化リスクが高い高齢者のみならず若年者を含む全年代にてCOVID-19重症化防止のためにワクチン接種の重要性が示されました。

 

イギリスの循環器系専門誌Heart 5にて、20203月から1年間、4069歳のCOVID-19罹患者約18千人と同年齢の非感染者約35千人を比較した結果、入院と自宅療養者を併せた全症例で、ほぼ全部の心血管系疾患の発症リスクが大きく高まり、死亡リスクは約30倍高くなっていたと報告されました。自宅療養者でも静脈血栓症発症リスク2.7倍、死亡リスクが約10倍高くなっていました。さらに、COVID-19で入院した人は、静脈血栓症発症リスク約27倍、心不全約21倍、脳卒中約17倍、心房細動約15倍、心筋梗塞約10倍増加し、死亡リスクは100倍以上でした。この調査結果のほとんどは、ワクチン接種が開始される前のもので、中高年者がワクチンを接種せずにCOVID-19に罹患すると、心血管系疾患の発症リスクや死亡リスクが著しく増加し、自宅療養者でも死亡リスクが飛躍的に高まります。

 

査読前論文ですが、イギリスよりCOVID-19罹患後の認知障害と血清バイオマーカー、神経画像所見との関係を検討した研究が報告されました6)。対象はCOVID-19が流行し始めた頃の入院を要した中等症~重症感染者になります。COVID-19に罹患すると認知機能低下が見られることが以前にも報告されていますが、この報告では、認知機能障害の程度は20歳の加齢に相当すると指摘されています。また、1年を経過しても神経細胞の障害マーカー高値が指摘されており、中枢神経への直接的ないし間接的原因に伴う神経炎症が継続すると思われます。また急性期に抗炎症効果があるステロイド使用にて認知機能障害が抑えられる知見も明らかにされました。COVID-19初期の頃のデータであるため、最近の状況に当てはめることができるかは明らかではありませんが、中等症~重症のCOVID-19罹患後の認知機能障害は長期間継続し、組織に炎症を生じる可能性があるのです。最近増加しているJN.1株も神経炎症を引き起こす可能性が高く、認知症予防には手洗い、マスク着用や換気等の感染予防を心がけることと感染や重症化を防ぐワクチン接種がやはり重要と考えられます。

 

参考

1)東京都保健医療局Webサイト 東京都保健医療局>感染症対策>新型コロナ保健医療情報ポータル>感染情報>最新のモニタリング項目の分析について

2)日本透析医会新型コロナウイルス感染対策ワーキンググループ. オミクロン株 XBB 系統流行後の透析患者における重症度と致死率について. 2023.

3)第134回元気で長生き講座【2023年10月号】

4)Marks P, Califf R. Is Vaccination Approaching a Dangerous Tipping Point? JAMA 2024. doi:10.1001/jama.2023.27685

5)Z Raisi-Estabragh, J Cooper, A Salih, et al. Cardiovascular disease and mortality sequelae of COVID-19 in the UK Biobank. Heart 2022. doi:10.1136/heartjnl-2022-321492

6)B Michael, G Wood, B Sargent, et al. Post-COVID cognitive deficits at one year are global and associated with elevated brain injury markers and grey matter volume reduction: national prospective study. Research Square doi.org/10.21203/rs.3.rs-3818580/v1