人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
course

  • 院内写真1
  • 院内写真2
  • 院内写真3
  • 院内写真4
  • 院内写真5
  • 院内写真6
腎内科クリニック世田谷
腎内科クリニック世田谷
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第134回 元気で長生き講座【2023年10月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~インフルエンザ流行にも伴い引き続き37.5℃以上の発熱時抗ウイルス薬タミフル1C内服をお勧めいたします~

 

報道でご存じかと思いますが、今年はインフルエンエンザが流行っています。通常冬に猛威を奮うインフルエンザですが、今夏においては過去最高レベルに暑かったにも関わらず、下図1のように例年には見られないような増加傾向を示しています。(下の赤線グラフは202295日から202393日までの動向を表しています。インフルエンザは流行時期に合わせ、毎年、第36週(8月末~9月初旬)から翌年の第35週までの1年間をインフルエンザシーズンとして情報提供を行っています。)

 

 

9月21日、東京都は統計を取り始めた1999年以降、最も早く「インフルエンザ流行注意報」を出しました。小池都知事は記者会見で、今後4週間以内に、大きな流行が発生する可能性が高い、十分な注意してほしいと呼びかけ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する感染予防とも併せて、換気や手洗いなどの対策を心がけるよう促しました。

 

 

上記22023年第38週の定点当たり報告数を都道府県別に色分けしたものです。全体では7.09(患者報告数35,021)となり、前週の定点当たり報告数7.03よりも増加しました。都道府県別では沖縄県(22.46)、千葉県(15.14)、愛媛県(14.07)がトップ3であり、23都道府県では前週の報告数よりも増加し、23都道府県では前週の報告数よりも減少しました。図を見ると南の暖かい地方を中心に流行していることが分かります。全国の保健所管轄区域で、警報レベルを超えている区域は7か所(6都道府県)で、注意報レベルを超えている区域は100か所(東京都を含む24都道府県)でした。

国内のインフルエンザウイルスの検出状況をみると、直近5週間(2023年第34週~2023年第38週)ではAH3亜型が65件(70%)、AH1pdm0926件(28%)、B2例(2%)の順でした。

 

インフルエンザの症状は、突然の発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、せき、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状がこれに続き、約1週間で軽快します。主な合併症として肺炎と脳症があげられます。

 

インフルエンザの早期の治療としては抗インフルエンザ薬(下表参照)の投与を行います。その他対症療法として、解熱鎮痛薬の使用等があります。抗インフルエンザ薬はウイルスが増殖するまでの発症後48時間以内に使用しなれば、効果は乏しいと言われています。症状からインフルエンザを疑った場合には早期の受診が重要です。

 

 

インフルエンザは予防が重要な病気です。ワクチン接種、マスク着用、手洗い、人混みを避けることなどが挙げられます。これはCOVID-19の予防方法と同じです。

 

本院ではかねてより、インフルエンザ及びCOVID-19対策として34オセルタミビルを本院通院透析患者様全員に1カプセル(C)を無償でお渡ししております。透析患者様の場合、十分な血中濃度が得られる為、予防であっても治療であっても上記表中のオセルタミビルは1Cのみで済み、1C5日間は効果が持続します。37.5℃以上の熱を認めた場合は、1224時間以内、特にせき等の呼吸器症状を認めた際には直ちにタミフル1Cを内服して下さい。現在インフルエンザとの同時流行も起きてきており、発熱時診断前の予防投与は保険が適用され、診断後の治療としてはインフルエンザで保険が適用され、COVID-19治療薬としては2C目以降自費となりますが透析患者様の場合治療は5日毎1Cの内服で済み、副作用もほとんどありません。

 

9月26NHKニュース5によると、COVID-19で重症化しやすいとされる人工透析患者様は、COVID-19の位置づけが「5類」に移行したあとも、感染した際の致死率がおよそ2%と高い状況が続いていることが日本透析医会の調査6で分かりました。日本透析医会の独自調査の結果、今年525日から912日までに全国の61の透析施設から報告されたCOVID-19感染者257人のうち、亡くなった人は6人で、全体の致死率は2.3%となっていました。しかし70歳以上の場合致死率は3.8%でした。また、感染が確認された時点で重症になっていた人は全体の7.4%でした。これらは去年から今年にかけての流行の「第8波」の際とほぼ同じ水準とのことです。オミクロン株XBB系統となっても、透析患者様における重症化リスクや致死率は、一般の方と比較して非常に高いため、依然注意が必要です。ワクチン接種の継続をお勧めすると共に罹患した場合直ちに保険が適用されるCOVID-19治療薬ラゲブリオカプセル内服もお勧めいたします。

 

参考

1)東京都感染症情報センター インフルエンザの流行状況 更新日2023年9月23日

2)国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ 第38週

3)第102回元気で長生き講座【2020年11月号】

4)第131回元気で長生き講座【2023年7月号】

5)人工透析患者 新型コロナ「5類」移行後も感染時の致死率 約2%. NHK Web. 2023年9月26日

6)オミクロン株XBB系統流行後の透析患者における重症度と致死率について. 日本透析医会新型コロナウイルス感染対策ワーキンググループ. 令和5年9月22日