最高水準の腎臓病及び透析医療を追求する京王線千歳烏山駅北口の夜間透析・在宅透析も行う腎内科クリニック世田谷です。

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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第110回 元気で長生き講座【2021年8月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~心臓にも良い長時間透析をお勧めします~

 

長時間透析には様々な利点があり良好な生命予後をもたらすと言われています。大きな利点の一つとして心臓への好影響で、過去にも多数報告されており、それらがまとめられた下記メタ解析の報告においても、短時間透析よりも時間あたりの除水量を低く設定でき緩徐な除水が可能となる長時間透析にて、心臓超音波検査における、心臓の機能評価の代表的な指標である心拍ごとに心臓が送り出す血液量(駆出量)を心臓が拡張したときの左室容積で割って求められる値であるEF(左室駆出率、EjectionFraction)の有意な上昇や、LVPWT(左室後壁壁厚、LeftVentricularPosteriorWallThickness)の有意な低下が報告されており、長時間透析研究会(本年は11月にWebにて開催されます)にて同様の報告を行った当院竹石康広臨床工学技士主任執筆内容を今回ご紹介すると共に引き続き「元気で長生き」の為にも長時間透析をお勧めします!

*Paweena Susantitaphong, Ioannis Koulouridis, Ethan M Balk, et al. Effect of frequent or extended hemodialysis on cardiovascular parameters: a meta-analysis. Am J Kidney Dis. 2012;59(5):689-99.

 

2019年「第15回長時間透析研究会」にて『長時間透析による心機能への影響』と題した発表を行いました。血液透析患者さんにおいて、長時間血液透析が及ぼす心機能への影響についてご紹介します。
透析と心機能に関係があるのか?-と不思議に感じる方もいると思います。実は、透析を受けている患者さんにとって、心臓病はとても重要な病気なのです。例えば、透析患者さんの死亡原因をみてみると、透析患者さん全体の約3分の1が心不全や心筋梗塞といった心臓病で亡くなっています。

日本透析医学会 統計調査委員会:図説「わが国の慢性透析療法の現況 年別死亡原因の推移2006年」より作図

 

透析患者さんの心臓が悪くなる原因は何なのか?
1つめは、腎臓が働かないために、体内に溜まる水分の量が増加して、心臓に余分な負担がかかることです。2つめは、心臓に酸素や栄養を送っている血管(冠動脈(かんどうみゃく))がつまってしまう「虚血性心疾患」です。透析患者さんは、はっきりとした症状がなくても虚血性心疾患に罹患している場合が多く、実際、約6割の方が虚血性心疾患に罹患しています。

 

1つめも2つめも、どちらもしだいに心臓を疲れさせてしまいます。心臓の疲労-それが死亡原因の中で最も多い「心不全」と呼ばれる病気です。
そこで心臓の負担を軽くするために除水をしなければいけない。溜まった水を抜けば心臓は悪くならないのか。しかし、透析患者さんの中には、透析のたびに血圧が下がり過ぎて、透析がつらく苦しいものになっている方が多くいらっしゃいます。何故溜まった水分を取ることで血圧が下がるのか。
ここで大切なのが水分を取ることで血圧が下がるのではなく、短時間で多くの水を引くから血圧が下がるのです。
透析で除水をすると、まず血液中の水が抜けるので循環血液量が減少しますが、その減少した分を補うため血管の周りの組織間液(間質液)が血管内に移動してきます。この現象をプラズマリフィリングといいます。(プラズマとは「血漿」のことで、リフィリングとは「再充填」とか「補充」という意味です。体重増加が少なければ、血液中から水を抜いてもプラズマリフィリングによって循環血液量はある一定の量を維持することができるため、大幅な血圧低下はありません。しかし、体重増加が多くて大量に除水する場合は、血液中から水を抜く速度がプラズマリフィリングの速度を大きく上回るため循環血液量を維持することができなくなり、急激な血圧低下になります。

 

低下した循環血液量を補おうと頑張るのが心臓です。そのダメージは目に見えない形で蓄積されていき、狭心症や心筋梗塞(虚血性心疾患といいます)、あるいは左室肥大や心不全などの心疾患を招き、心機能が低下すれば、心臓から十分な血液を送り出すことができなくなり、結果として循環血液量が減り血圧が低下します。
身体に負担が無いように体内に余計な水分を溜めないようにする事ばかり気にし過ぎては栄養も不足しストレスばかりが増えていきます。そこで栄養をしっかり摂って体に負担が無いように除水するのが長時間透析になります。
今回私が調べたのが週の透析時間で12時間以上、15時間以上、18時間以上ごとにEF:左心室機能、LVPWT:左室後壁壁厚(心肥大の指標)の値を比較検討しました。期間は3年です。

 

 

12時間以上群ではEFは61.3±7.6%から61.1±13.4%、LVPWTは11±1.7mmから10.8±2.4mmに変化しました。18時間以上群での値の変化ではEFは62.7±7.3%から67.9±5.2%、LVPWTは10.5±2.1mmから9.9±1.8mmに変化しました。透析時間が長いほどEFは増加する傾向が見られ、LVPWTは低下の傾向が見られました。このことから長時間透析をすることで、心臓に対する負荷を軽減し、心肥大を抑えることが出来たのではないかと考えられます。長時間透析を行う事で心機能の改善の可能性が示唆されました。