人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第100回 元気で長生き講座【2020年9月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~ドライウエイト(DW)を覚え、日々の体重管理を行いましょう~

 

長く続いた7月の梅雨が明けたとたん、歴史的猛暑を記録する暑さが続いています。8月13日に気象庁から発表された「1か月予報」によると、この先1か月も全国的に気温が高く、9月に入っても厳しい暑さが続くとのことです。

 

感染対策としての換気も必要で熱中症が心配されるところですが、熱中症予防の為にこまめに水分補給をと一般的には言われています。透析患者様は、ご自分の尿(自尿)の量(尿量)が多い透析歴の比較的短い方は、熱中症への注意も必要かと存じます。一方、自尿が少ないもしくは無尿で透析歴が概ね2年以上の方、透析間体重増加が比較的多い方は、脱水や熱中症にはなりにくいことが考えられます。暑さや塩分摂取に伴う口渇で水分摂取量が多くなり、体重が増加し過ぎてしまう方もいらっしゃいます。ドライウエイト(DW:透析後目標体重・基準体重・乾燥体重・基礎体重)に対しどのくらい体重が増えたか、すなわち体重増加率と生命予後は密接に関係することが報告されています。2009年末のわが国の慢性透析療法の現況では、二日空きでのDWに対する体重増加率4~6%で最も生命予後良好であり、3%未満又は7%以上で生命予後不良となっています。

 

体重増加率は本院透析支援システムで毎回自動計算されるため、知りたい方はお申し出下さい。計算で算出することも出来ます。例えば、DW60kgの方が二日空きで3kg増加した場合、体重増加率はベストの5%(3kg(増加量)÷60kg(DW)×100(%)=5%)です。7%以上と体重増加が多いと心臓や血管に負担がかかり、心臓の筋肉が厚くなってしまういわゆる左室肥大をきたし、高血圧、心房細動等の不整脈やうっ血性心不全、動脈硬化症の原因となり、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や末梢動脈疾患(慢性閉塞性動脈硬化症)といったいわゆる心血管病を引き起こし、命にかかわることが考えられます。透析間体重増加が多いと透析時の除水量が多くなってしまうため、透析中の下肢つり、血圧低下(透析低血圧)や透析後の疲労感を来たしやすくなります。透析中の血圧も生命予後との関連が報告されており、透析低血圧を防ぐ最も良い方法は透析時間もしくは回数の増加です。透析間体重増加の主な原因は塩分と水分の過剰な摂取が言われており、暑くてついつい水分を取りがちですが、体重が増加しすぎないよう塩分と水分は控えて頂く必要があります。心臓への負担、高血圧や透析中の血圧低下予防のためにも1日空きでDWの4(~5)%未満、2日空きでDWの6(~7)%未満をお勧めしております。災害対策にも有効であり、ご自身のDWを正確に覚えて頂き、毎日ご自宅でも体重を測定してみて下さい。同時に血圧も測定して頂けますと両者の結果が相関しやすいことが分かるかと存じます。本院受付前にも設置しておりますBluetooth(ブルートゥース:近距離でデジタル機器のデータ通信をやり取りする無線通信技術)内蔵のA&D体重計(UC-352BLE)を用いれば無料の自己管理アプリWelbyマイカルテに自動で記録も可能です。測定された体重がDWを上回っていれば、脱水や熱中症の心配は低いと存じます。

 

一方、透析間体重増加が2日空きでDWの3%未満の方は食事量が不十分であることが要因として考えられます。万一、下痢がある場合や、暑い日に沢山の汗をかいて、体重がDWを下回っていた場合は、脱水や熱中症の心配がありますので、まずは十分な食事摂取をお勧めします。十分な食事摂取でもDWを上回らない場合は水分補給も行いましょう。しっかり食べて栄養不足にならないよう務めましょう。栄養状態の良い方、筋肉量や透析量の多い方の生命予後良好が報告されておりますので、しっかり食べて動いてしっかり透析が必要です。