人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

腎内科クリニック世田谷
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菅沼院長の元気で長生き講座
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第140回 元気で長生き講座【2024年5月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

紅麹コレステヘルプに関連した腎障害患者様における検査データ異常と高リン(P)血症治療薬一覧~

 

2024年322日、小林製薬株式会社販売の紅麹関連製品にて一部の紅麹原料に意図しない成分が含まれている可能性が判明したことが発表され、追って厚生労働省329日、小林製薬のサプリメントに「プベルル酸」が意図せずに含まれていたことを明らかにしました。小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した人が、腎臓の病気などを発症した問題で、厚生労働省は、425日の時点で延べ262人が入院、5人が死亡し、全国で健康被害の訴えが相次いでいます1。また、329日に設置された厚生労働省と消費者庁のコールセンターには、425日までの27日間で、合わせて4635件の相談が寄せられたとのことです。

 

【コールセンター】

電話番号 0120-388-687

午前9時~午後9時まで(土日や祝日も相談可)

 

プベルル酸は1932年に報告された、青カビの一種の代謝産物から見つかった天然化合物で、化学式は「C8H6O6」。マラリア治療のための有望な天然物質の一つとして注目されていました。マラリアの治療薬といえば「クロロキン」が有名ですが、クロロキンに耐性のあるマラリア菌が問題視されており、そこでペニシリンがカビから発見されたように、治療薬開発のために数多くのカビの培養から治療薬の抽出が行われていました。その1つが「プベルル酸」。プベルル酸はクロロキン耐性のマラリア原虫プラスモジウム・ファルシパルムK1株に対して非常に強い抗マラリア活性を示したことから、注目されるようになりました2。しかし研究の結果、プペルル酸は経口投与では抗マラリア活性を示すことができなかったうえに、皮下投与によるマウスの実験では0日目と1日目の投与で、5匹中 4匹が 3日目までに死亡するという強い毒性まで示したため、そのままマラリア治療に使われることはありませんでした3

 

では、このように毒性のあるプベルル酸が紅麹サプリメントに含まれ得るのか?というと、実は本来であれば関連性は非常に薄いとのことです。その理由は、紅麹とプベルル酸は培養過程が大きく異なることです。紅麹は、うるち米から「種麹」と「製麹」の2段階を経て作られます。紅麹の製作は非常に繊細で、水分管理や温度調節を厳密に行わないといけません。紅麹を作る胞子も決まっています。一方、プベルル酸を精製するためには、ブドウを発酵させて出た『FKI-4410』というカビを培養する必要があります。紅麹米にブドウは使いませんので、培養過程でプベルル酸を産生するカビが付着することは非常に考えにくいです。そして、紅麹サプリメントは多くの化合物が含まれていますが、これらの成分は全て同定されたものであり、その中にはプベルル酸は含まれていません4。そのため、なぜプペルル酸が混入されたのかの原因究明が進められています。紅麹自体に有害性は無く、サプリメントの製造過程で今回想定外の意図しない有害物質が混入してしまったことが問題となっています。

 

「紅麹を含むいわゆる健康食品を喫食した」後の健康被害については、326日に厚労省より通知「紅麹を含むいわゆる健康食品の取扱いについて」が発出され、紅麹を含むいわゆる健康食品について食品衛生法第59条に基づく「廃棄命令」などの措置を講じるとともに、329日には事務連絡「小林製薬株式会社が製造した紅麹を含む食品等にかかる健康相談について」を示し、「当該製品の喫食歴から何らかの不安等がある場合には、医療機関等を受診する」ことを案内するなどの対応が行われています。その一環で、紅麹を含む食品を摂取した後、何も症状が無くても不安等ある場合は医療機関にて保険診療を受けることができるようになっています。通常であれば「おなかが痛い」「むくみがひどい」「排尿がいつもと異なる」などの症状がないと保険診療の中で検査等を行うことはできず、「体調等に問題はないが、不安である」場合、つまり健康な人に対して保険診療にて治療を含む医療が行われることは認められていません。しかしこの紅麹問題については、不安であれば保険診療で診察が受けられることが明確化されました。つきましては、もし紅麹製品を摂取した方で体調にご不安のある方は、本院にご相談いただければと思います。

 

日本腎臓学会が「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケート調査(中間報告)結果を会員向けに20244月発表しました。主な検査データ異常としてはいわゆるFanconi症候群を疑う所見が目立っており、下記特徴的所見が認められました(中央値[四分位])

・低カリウム血症(3.3 [2.9-3.7] mEq/L; 65%3.5 mEq/L未満)
・低リン(P)血症(2.0 [1.7-3.3] mg/dL; 60%2.5 mg/dL未満)
・低尿酸血症(1.8 [1.4-3.2] mg/dL; 60%2.0 mg/dL未満)
・代謝性アシドーシス(HCO3- 16.0 [13.0-18.2] mmol/L; 65%18.0 mmol/L未満)
・尿糖陽性(87%3+以上)

 

また、
eGFR低下(17.8 [14.2-31.0] mL/min/1.73m2)
・血清クレアチニン上昇(2.3 [1.5-3.5] mg/dL)
・尿蛋白増加(2.3 [1.5-2.9] g/gCr)
・尿β2MG(21618 [3826-35763] ng/mL)
・尿NAG(23.6 [14.5-33.1] IU/L)
となっており、Fanconi症候群としては尿蛋白がやや多いことが発表されました。

 

上記の代謝性アシドーシスは、血液ガス分析装置を有する本院でも血液検査にて即時診断が可能であり、腎不全患者様で認められることも多い代謝性アシドーシスの程度の評価を、本院透析患者様を含む慢性腎臓病(CKD)患者様に対し適宜行っており、高P血症治療薬選択における判断の材料にも致しております。下記に第68回 元気で長生き講座(2017年8月号)P吸着薬一覧5をアップデートした最新の高P血症治療薬の一覧を掲載します。高P血症に対する新しい治療薬として、フォゼベルR錠が新たに発売されました。フォゼベルRは、透析患者様の腸の中のPが血液中に移動するのを抑えて、 血液中のP濃度が上昇しないようにする薬です。15mgを開始用量とし、12回、朝食及び夕食直前に経口にて服用します。今までのP吸着薬(カルタンR、フォスブロックR/レナジェルR、リオナR等)が消化管内でリンを金属などに吸着させることによりに消化管内での吸収を抑制するのに対し、フォゼベルは、小腸の主に細胞と細胞の隙間を通りにくくしてPの吸収を阻害する新しい機序の高P血症治療薬です。今年発売されたばかりの新規治療薬の為、来年迄は最大2週間迄の処方となります。高P血症治療薬に関してご質問、ご相談のある方は、本院医師または看護師にお申し出下さい。

 

 

 

 

参考

1)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240426/k10014434321000.html NHK NEWS WEB  2024年4月26日 16時35分 

2)M Iwatsuki, S Takada, M Mori,In, et al. In vitro and in vivo antimalarial activity of puberulic acid and its new analogs, viticolins A–C, produced by Penicillium sp. FKI-4410. The Journal of Antibiotics, 2011.

3)G Sennari, R Saito, T Hirose, et al. Antimalarial troponoids, puberulic acid and viticolins; divergent synthesis and structure-activity relationship studies. Scientific Reports volume 7, 2017.

4)B Zhu, F Qi, J Wu, et al. Red Yeast Rice: A Systematic Review of the Traditional Uses, Chemistry, Pharmacology, and Quality Control of an Important Chinese Folk Medicine. SYSTEMATIC REVIEW, 2019. doi.org/10.3389/fphar.2019.01449

5)第68回 元気で長生き講座(2017年8月号)