人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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第122回 元気で長生き講座【2022年9月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種をお勧めします~

 

若干頭打ちに見えるものの、COVID-197波の影響は依然大きい状況にあります。2022年2月時点で、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは全世界で少なくとも10億回以上接種されており、副反応が疑われる死亡や重篤な後遺症が多く起きていることは報告されておらず、mRNAワクチンの安全性は十分高いことが示されています(記事1)。イギリスのデータではワクチン接種から21日以内の人の全死亡率は未接種者の半分以下であり、ワクチンを接種した直後に死亡するリスクが高まる因果関係はないことが、明らかだといえます(記事2)。又、ワクチンの3回目接種においては「打った人のほうが打たない人よりも3倍以上入院する確率が『低い』」ことが明らかになっています(記事3 )。以上3つのBuzzFeed Japan(バズフィードジャパン)籏智 広太(はたち こうた)ニュースレポーター執筆記事もあり、菅沼自身もファイザー社2回、その後モデルナ社2回の計4回のワクチン接種を受け元気です! 今回ワクチンに関するいずれも本年発表の3つの論文とm3.com819日発表の記事「22歳以下の感染リスク2倍に、ワクチン接種率と逆相関」をご紹介します。引き続きマスクの着用、アルコールによる手指消毒もしくは手洗い(来院時石ケンもしくはアルコールより手荒れが有意に少ない本院一階のオゾン水手洗い装置による手洗いをお願いします)、3密(密閉・密集・密接)の回避等の日々の感染対策徹底をお願いするとともに、感染、重症化、合併症いずれに対しても予防効果が明らかであるワクチン接種を引き続きより多くの皆様にお勧めいたします!

 

新型コロナワクチンを接種すると、血栓が出来ると勘違いしている方がいらっしゃるようです。アストラゼネカ社製ワクチンでは稀に起こるようですが、ファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンでは血栓症との因果関係は明らかになっていません(厚労省新型コロナワクチンQAより)。東京大学の合田 圭介(ごうだ けいすけ)教授らのグループは、ワクチン接種後の体内における血小板凝集物を、接種前後の5つの時点で調査しました1。血栓が生じる際に、血中で微小な血小板凝集物が増加することが知られています。結果は、COVID-19罹患者では重篤度(軽症、中等症、重症)に比例し血中血小板凝集物や血小板と白血球の凝集物が増加していましたが、ワクチン接種者では1回目接種前から3回目接種後迄測定された5つの時点で有意な増加は認められませんでした(ns:図)。即ち、ワクチン接種による血小板凝集物の増加は起きません。この調査により血栓はワクチンよりもCOVID-19で起きることが証明されました。

 

1)Zhou Y, Masako N, Hiroshi K et al. Long-term effects of Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccinations on platelets. Cytometry, Aug 2022. DOI:10.1002/cyto.a.24677.

 

 

実際、COVID-19罹患後様々な静脈血栓や肺塞栓症等を合併することが知られており、入院の長期化、予後の悪化との関連が指摘されています。アメリカの専門誌JAMA Internal Medicineに、ワクチン接種が静脈血栓・塞栓を減らすとの調査結果が発表されました2。イギリスにて、COVID-19罹患者18,818人を対象に発症後30日以内に静脈血栓塞栓症(=深部静脈血栓症+肺塞栓)を起こした頻度を調査した結果、静脈血栓塞栓症はCOVID-19罹患後30日以内に発症が25倍以上増えていました。一方、ワクチンを1回のみ接種または非接種者では発症リスクが依然高いままですが、ワクチンを2回接種した群では発症リスクが6倍程度迄減ることが分かりました。

2)JunQing Xie, Albert Prats-Uribe, Qi Feng, et al. Clinical and Genetic Risk Factors for Acute Incident Venous Thromboembolism in Ambulatory Patients With COVID-19. JAMA Intern Med. August 18, 2022.

 

 

妊娠女性は、異常な高血圧と共に意識消失やけいれんを起こす子癇(しかん)、浮腫や尿蛋白、血栓塞栓症、低体重児出産や早産等様々な疾患を生じうることが知られています。アメリカにて、母体における妊娠中重篤な疾患が発症する頻度が調査されました320203月~20221月迄に妊娠中COVID-19に罹患した約3,000名とCOVID-19に罹患しなかった約12,500名が対象となりました。その結果、妊娠中COVID-19に罹患すると重篤な疾患発生リスクが大きく増加していました。特にデルタ株は、7.7倍もの高いリスクがあったことが判明しました(図)。オミクロン株流行時にはリスクが1.6倍に下がりましたが、オミクロンは感染者数が非常に多かった為、重篤な疾患の発生者数自体は増えています。即ち、妊婦のCOVID-19罹患は重篤な疾患発生リスクとなることが分かります。妊婦に対してもワクチン接種が重要と考えられ、日本産科婦人科学会も推奨しています。

 

3)Maria Mupanomunda, Mohamad G. Fakih, Collin Miller, et al. Comparison of Severe Maternal Morbidities Associated With Delivery During Periods of Circulation of Specific SARS-CoV-2 Variants. JAMA Netw Open. 2022;5(8):e2226436.

 

 

22歳以下の感染リスク2倍に、ワクチン接種率と逆相関

 

国立感染症研究所感染症疫学センター長の鈴木基氏は8月18日の厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(座長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)で、2021年5月と7~8月を比べた年齢別の感染リスクの変化を報告した。ワクチン接種が進んだ65歳以上の高齢者で感染リスクが大きく下がる一方、若年層ではリスクが上昇。22歳以下では2.04倍に上った。ワクチン接種率との相関係数は-0.98と逆相関が見られた。厚労省の取りまとめでは、人口10万人当たりの新規陽性者数は未接種で67.6人、2回接種で4.0人と約17倍の差があった(以上、原文のまま掲載:後略)。