人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
腎内科クリニック世田谷
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第121回 元気で長生き講座【2022年8月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~油断せずに感染対策徹底とワクチン接種をお勧めします~

 

6月後半から急激に増え始め第7波を来した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威は、日本において過去最高の数値をもたらしています。感染を予防するために行うことは従来と変わりはありませんが、発声時は飛沫が生じますので特にマスクを着用して頂き、来院時を含めアルコールによる手指消毒もしくは手洗いや換気を含む3密(密閉・密集・密接)の回避等の日々の感染対策徹底と、重症化リスクの高い糖尿病、腎臓病及び透析患者様はもちろん若年者の方々を含む多くの皆様にワクチン接種をお勧めします。本年4月JAMA Network Openにてアメリカのカリフォルニア州ではワクチン接種により入院や死亡、そして72%もCOVID-19を防ぐことが出来たとの報告(doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.8526.)もなされています。ワクチンの3回目接種、4回目接種の意義ですが、3回目接種を終えた割合は高齢者で多く、感染者が多い若年者でワクチン接種割合が少ないことが分かっています。このことからもワクチンによる感染予防効果は明らかであり、感染者の数を減らすためには、特に若年者の皆様の3回目接種の割合を増やすことが望まれます。そして3回目接種から5ヵ月経った方々では、4回目接種により、抗体価が再び上昇し、感染リスクも重症化リスクも下がりますので、高齢者、医療従事者、基礎疾患がある皆様は4回目接種が可能ですので、リスクよりもベネフィット(利点)が勝ると考えられるワクチンを受けるべきと考えます。通院患者様におかれましては濃厚接触者となってしまった場合や発熱時はご来院前にご連絡ください。

今回、

1.興味深い論文(Christine M Szablewski, Karen T Chang, Clinton J McDaniel et al. Pediatrics. 2021 Apr;147(4):e2020046524.

 

2.日本透析医会での紹介(2022/6/8掲載)論文

Fourth Dose of BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting
(ファイザー社新型コロナワクチンの4 回目接種の効果)

 

3.先月714日、公益財団法人東京都医学総合研究所から「新型コロナウイルスワクチン接種後の抗S1-IgG抗体及び中和抗体価推移について」が公表され、東京都福祉保健局より紹介された東京感染症対策センター(東京iCDC)所長のコメント

 

4.アメリカのフォーチュン誌に掲載されたCOVID-19後遺症の恐ろしさを報じる最新記事「アメリカでは既に100万人がCOVID-19後遺症のために仕事ができなくなっている」

 

5.2018年日本血液透析濾過(HDF)学会にて行われたディベートセッションにて菅沼が「クエン酸含有無酢酸重炭酸透析液を用いた高血液流量HDF療法」(腎と透析別冊 87 HDF療法’19 P51-53, 2019)を講演させて頂いた際、共にクエン酸含有透析液派としてご講演頂いた須坂腎・透析クリニック(院長 小山 貴之 先生)が、ご自身のブログに掲載された2022年7月30日掲載記事の一部

 

をご紹介いたします。

 

1.

小児科の国際誌Pediatrics掲載内容ですが、「2020年、アメリカのジョージア州で子どものキャンプがあり、参加者は予め抗原検査陰性者のみとしたものの、627人の参加者(平均15才、6日間滞在)のうち、過半数の351人もの子供の感染が後に分かりました。調査の結果、実は少なくとも12人がキャンプ参加前に既に感染しており、残りの339人はこの人たちからキャンプ中感染したことが分かりました」。PCRあるいは抗原検査陰性者だけ参加者としたはずだったのですが、結果は過半数もの参加者に感染が生じました。COVID-19の場合、感染者でも約2日間と言われている潜伏期間中抗原検査は陽性にならないことがあり、当日に会場で検査をしたとしても、見落とす可能性があります(PCR検査でも見落とす可能性があります)。検査をしないよりはしたほうが良いとは考えられますが、検査が陰性だから感染していないとは限らないので、引き続き、体温(発熱よりも咳等の呼吸器症状が先行することもあります)や体調の変化(があれば再度検査します)に注意し、対人距離保持、換気、できる限りのマスク着用等の感染対策徹底をお勧めします。

 

2.文献:Ori Magen, Jacob G Waxman, Maya Makov-Assif, et al: N Engl J Med. 2022; 386(17); 1603-1614.

全文URL: https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa2201688?articleTools=true 

 

ファイザー社新型コロナワクチンの4回目接種の効果

2022 年13日~218日におけるイスラエル最大の医療組織のデータを解析し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー社新型コロナワクチンの4回目接種の有効性を評価した。 60 歳以上で研究期間中に4回目接種を受ける資格があり(少なくとも4ヵ月前に3回目接種済み)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染歴がない人を対象とした。 4 回目接種群と 3 回目接種群を年齢、性別、居住区などでマッチングを行い、マッチした 182,122ペアで4回目接種後730日の時点でのワクチンの有効率を3回目接種群と比較検討した。 主要評価項目は、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2 感染、症候性COVID-19COVID-19関連入院、重症化およびCOVID-19による死亡とした。 4 回目接種後 730 日目の有効率は、PCR 検査で確認された SARS-CoV-2感染は45%、症候性 COVID-19 55%COVID-19 関連入院は68%、重症化は62%COVID-19 による死亡は74%であった。 COVID-19に対するファイザー社新型コロナワクチンの4回目接種は、4ヵ月以上前に受けた3回目接種と比較して、接種後30日までのCOVID-19 関連アウトカムの改善に有効であることが示された。

要約作成者のコメント: 本論文は、新型コロナワクチンの4回目接種の有効性を、大規模な患者数(両群に18%の慢性腎臓病患者を含む)かつ実臨床で示した論文です。ただし、30 日という短期間での有効性であり、長期間の効果は不明であることが欠点です。 本邦の、新型コロナウイルス感染対策合同委員会のレジストリ(202262日時点)による致死率は、ワクチン未接種者 26.2% (404/1,502)2回目接種 5.8% (94/1,608)3回目接種 1.7% (6/357)と報告されており、ワクチン接種の有効性が示されており、2回目接種までの効果は Therapeutic Apheresis and Dialysis に掲載されています。 本邦では、2022 525日より、3回目接種から5か月以上が経過した、60歳以上または18歳以上の基礎疾患や重症化リスクのある方を対象に、4回目の新型コロナワクチン接種が開始されました。18歳以上の透析患者はすべて対象者となりますので、透析患者における感染や重症化および致死率を抑制するために、4回目のワクチン接種が推奨されます。

要約作成者:医療法人社団豊済会 下落合クリニック 菊地 勘

 

3.

東京iCDC所長 賀来満夫

 

東京iCDC専門家ボードのメンバーでもある東京都医学総合研究所の小原道法先生から、都内医療従事者の検体(血清)を用いた、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種から約7か月経過した方および4回目接種から1週間以上経過した方の抗体の測定結果が発表されました。
3
回目接種から7か月後の中和抗体価は、3回目接種から4か月後よりは有意に低下しているものの、2回目接種から7か月後と比較すると、高い値が維持されているとのことです。
また、4回目接種により中和抗体価は有意に増加しているとのことです。
この結果に対して、東京iCDCの各分野の専門家の先生方等から以下のご意見をいただきました。
2
回接種だけでは、オミクロン株亜系統への効果は不十分であるものの、3回接種により、オミクロン株亜系統に対しても高い中和抗体価が得られ、4回接種により、さらに中和抗体価が増加すると考えられます。
また、中和抗体以外の抗体の作用も、感染や重症化を防いでおり、加えて、ウイルスに感染した細胞を攻撃する細胞性免疫も追加接種により活性化し、発症や重症化を防いでいると考えられ、これらの液性免疫や細胞性免疫が総合的な効果を示すものと考えられます。
さらに、ワクチン接種により、感染しても排出する感染性ウイルスの量が減り、周りの人に感染させてしまうリスクを下げることができると考えられます。
このため、3回目接種を一層進めていくことが重要です。また、高齢者や基礎疾患があるなど、重症化リスクが高い方の4回目接種を進めていくことが重要です。追加接種を受けていない方は、是非とも早めの接種を御検討いただきたいと思います。

 

4.

日本でもこのまま新型コロナウイルス感染拡大が進むと、今後、何万人もの後遺症患者、それも仕事に支障を来す人たちが増えてくる可能性があります。若い世代の方々は、自分達は重症化する確率が高くないのでコロナは怖くないと考える傾向があるかも知れませんが、考え直すべきでしょう。今、感染拡大を何とか止めないと、アメリカと同様のことが日本でも起きる可能性を危惧致します。

https://fortune.com/2022/07/19/long-covid-congressional-hearing-labor-force-health/?fbclid=IwAR3RprZPWOQmYpZGANWLYJkKlJxdp8NgyrQT_HZvrm-k0UwcsPpjuRwjCGw

 

5.

・インフルエンザよりも数倍〜数十倍高い死亡率、軽症例や若年齢でも生ずる
後遺症、重症化しないとされていた小児感染例に散発する重症例(小児他系統
炎症性症候群)など、ただの風邪どころかインフルエンザよりも死亡率の高い
感染症がインフルエンザよりも高い感染性で今だ流行している事実を軽視する
ことは出来ません。

・マスクは万能ではありませんが無力でもありません。ワクチンを適切に接種して
いれば吸入する感染性飛沫が少ないほど感染予防になり、人混みやリスク保持者
がいる環境でのマスク着用は有効です。

・感染者が多数発生した他国と低く抑えてきたわが国の易感染性を同じテーブルで
議論することはいささか乱暴です。また感染者が多発した国ではそれだけ多くの
死亡者が出たことも忘れてはいけません。

・適切なブースター接種を受けていれば接種後一定期間感染予防効果は上昇しま
す。更に細胞性免疫の賦活化により重症予防効果は長期に維持されます。
またウイルス排泄量の低下や後遺症の発生頻度を低下させる報告もあり打てる
人は小児も含めて接種することが望ましいと考えます。

 

感染を制御しながら経済や日常生活を維持するには、個人個人が出来る範囲の感染予防を地道に継続する必要性が問われているものと思います。