第20回 元気で長生き講座(2013年7月号)
〜血管の老化(動脈硬化)の予防や治療にて「元気で長生き」を実現しましょう!〜
血管の老化とも言える動脈硬化が進展すると、動脈壁が厚くなり、動脈の狭窄や閉塞を来します。心臓の血管が狭窄すると狭心症、閉塞すると心筋梗塞、脳の動脈が閉塞すると脳梗塞を起こし、命に関わりますので、これらの予防のために動脈硬化の予防や治療は重要です。
透析患者さんは、高血圧、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD:高リン血症、高カルシウム血症や二次性副甲状腺機能亢進症→動脈壁などに石灰化を来す事があります)、代謝性アシドーシス、高尿酸血症、高脂血症、低栄養や炎症に伴い、動脈硬化(低栄養、炎症と動脈硬化が併発した状態を、MIA症候群と言います)が起こりやすいため、動脈硬化の検査の一環として血圧脈波検査のCAVI、血管内皮機能検査FMD測定を約半年毎、頸動脈(首の動脈)の超音波検査を約1年毎に行っています。
検査の結果、CAVI値の上昇や血管内皮機能を示すFMD値の低下等が見られた場合は、動脈硬化の進行を考え、生活習慣の改善、薬物療法や透析量を検討します。
生活習慣の改善の内容としては、禁煙、塩分水制限による高血圧対策、運動の推奨、EPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれる魚(マグロ、サバ、ブリ、イワシ、サンマ等)の摂取などが上げられます。
薬物療法としては抗動脈硬化作用のある降圧剤(ACE阻害薬:コバシル、タナトリル、プレラン等やARB:アジルバ、オルメテック、ニューロタン等)、抗動脈硬化作用のある抗血小板薬(プレタール)、抗動脈硬化作用のあるEPA製剤(ロトリガ、エパデール)、抗動脈硬化作用のある高脂血症治療薬スタチン(リバロ、クレストール等)、高尿酸血症に対する尿酸低下薬(フェブリク等)、CKD-MBDに対する各種薬剤(リン吸着薬:フォスブロック、レナジェル、ホスレノール、キックリン等、レグパラ、ビタミンD製剤:ロカルトロール、アルファロール、ワンアルファ等)等が検討されます。
透析量を増加させた「しっかり透析」も高血圧、代謝性アシドーシスや高リン血症等の是正を介し、動脈硬化の予防に寄与することでしょう!