人工透析・糖尿病専門外来 千歳烏山駅北口

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第112回 元気で長生き講座【2021年10月号】

菅沼院長の元気で長生き講座

 

~ご家族や周囲の方もワクチン接種と感染対策継続の勧めと抗アレルギー薬の効果~

 

千葉大学医学部附属病院が、同院「コロナワクチンセンター」にて、新型コロナワクチン(ファイザー社製)を接種した職員の抗体価を調べたところ、1,774名のうちほぼ全員(1,773名)に抗体価の上昇がみられたと発表※1しました。ワクチンに対する抗体反応を調べる研究としては、これまでで最大規模の研究です。横手幸太郎病院長は「新型コロナワクチンについては、感染後の発症と重症化の抑制に向けて、ワクチン接種後の抗体反応を大規模に調べる研究が待たれていましたので、今回、日本で約2,000人規模の効果検証ができたことは大きな成果であり、今後の接種を後押しし、コロナと闘う医療従事者に安心を与えてくれるものと考えます。」とコメントしています。今後千葉大では、ワクチンによる副反応と抗体反応がどのように関連するのかについて解析を進めているとのことです。

 

【研究の概要】
〇研究名:「COVID-19ワクチンに対する免疫応答を規定する機構の解明」
〇実施者:千葉大学病院コロナワクチンセンター(千葉大学病院と千葉大学医学研究院が連携)

 

【研究成果のポイント】
〇ワクチン接種前の段階で、抗体が陽性だったのは、21名(1.1%)。
〇2回目接種後、抗体が陽性となったのは1,774名中1,773名(99.9%)。
〇抗体価は、接種前の中央値が<0.4U/mL(多くが全く抗体がない状態)に対し、接種後の中央値は2,060U/mLと大幅に上昇。(図1)
〇免疫抑制治療、年齢や性別、飲酒、接種間隔などが影響。(図2)

※1 Takahiro Kageyama, Kei Ikeda, Shigeru Tanaka, et al. Antibody responses to BNT 162b2 mRNA COVID-19 vaccine in 2,015 healthcare workers in a single tertiary referral hospital in Japan. med Rxiv. doi:https://doi.org/10.1101/2021.06.01.21258188

 

 

大前清嗣先生(東京女子医科大学東医療センター)が2010年に発表された論文※2にて、ワクチン接種後の抗体価上昇との関連が報告(図2)された抗アレルギー薬内服が心不全に関連する心臓の左心室リモデリング(心肥大)を抑制することを明らかにしており、さらに、2015年の日本透析医学会学術集会・総会にて、エビデンスレベルが無作為化割り付け試験(RCT)に準じるものとして扱われる傾向スコアマッチング(プロペンシティスコアマッチング)propensityscore(PS)matching法を用いた解析にて抗アレルギー薬内服が透析患者における全死亡、心血管死を抑制する可能性を報告しています。透析患者における皮膚掻痒症と生命予後との関連が報告※3されており、皮膚掻痒症やアレルギー性鼻炎に対し保険が適用されております抗アレルギー薬処方をご希望される患者様はご相談・お申し出下さい。

※2 Kiyotsugu Omae, Tetsuya Ogawa, Masao Yoshikawa, et al: The use of H1-receptor antagonists and left ventricular remodeling in patients on chronic hemodialysis. Heart Vessels. 2010,25(2):163-9.doi:10.1007/s00380-009-1183-9.
※3 Narita I, B Alchi, K Omori, et al: Etiology and prognostic significance of severe uremic pruritus in chronic hemodialysis patients. Kidney Int. 2006,69(9): 1626-32. doi:10.1038/sj.ki.5000251.

 

透析患者様においては免疫反応が低下しており、ワクチン接種後も十分な抗体価が得られなかったり、抗体が減少する速度が速いことが懸念されています。中和抗体が陽性となる割合は1回目の接種から3~4週間後には健常人の半分以下とされており、透析患者様は抗体価が上昇しにくいとされています。ただし、2回目の接種では健常人の1回目の接種と同等の抗体価となるため※4、しっかりと2回接種を行う必要があります。Agurらは、血液透析及び腹膜透析(PD)患者様双方ともアルブミン(Alb)値3.5g/dL以上と抗体価上昇との有意な関連を報告※5しており、肉、魚や大豆類等タンパク(蛋白)質の多い食事摂取をお勧めします。家庭内感染や高い発症予防効果があるワクチン接種後であってもブレイクスルー感染事例も報告されている為、ご家族や周囲の方もワクチン接種とワクチン接種後も手指衛生、マスクや換気等の感染予防対策継続をお勧めします。

※4 Speer C, Goth D, Benning L, et al: Early Humoral Responses of Hemodialysis Patients after COVID-19 Vaccination with BTN162b2. Clin J Am Soc Nephrol 2021: DOI:10.2215/CJN.03700321
※5 Timna Agur, Naomi Ben-Dor, Shira Goldman, et al: Antibody response to mRNA SARS-CoV-2 vaccine among dialysis patients – a prospective cohort study. Nephrol Dial Transplant 2021, 36(7)1347–49;
https://doi.org/10.1093/ndt/gfab155