最高水準の腎臓病及び透析医療を追求する京王線千歳烏山駅北口の夜間透析・在宅透析も行う腎内科クリニック世田谷です。

菅沼院長の元気で長生き講座
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腎内科クリニック世田谷
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〒157-0062 東京都世田谷区南烏山4-21-14

第50回 元気で長生き講座(2016年1月号)

菅沼院長の元気で長生き講座

~十分な透析と共にマグネシウム(Mg)の多い食事摂取や酸化Mg少量内服の勧め~

 

腎不全患者様においては腎臓からのMg排泄が少なく血清Mg値は高値となる事が知られています。高Mg血症は徐脈や意識障害を来すことが知られており、国内で使用されている透析液中のMg濃度は現在1~1.5mEq/L(1mEq/Lが主流です)と低く設定されており、透析中カリウム(K)やリン(P)と共にMg除去も行われています。当院で使用されている透析液Mg濃度も1mEq/Lしかありません。

 

透析患者様における高Mg血症の報告の多くは、Mg含有の薬剤(便を柔らかくする下剤の酸化Mg)常用量での投与で起きており、当院での投与量よりは多いものの750mg/日という比較的少量であったにも関わらず著明な高Mg血症を来した報告では、K6.2mEq/Lと高値で透析量が不十分であった可能性が指摘されています。当院での高効率透析により、Mg血中濃度は上昇しにくい事が考えられます。

 

透析患者様における血清Mg濃度はむしろ3mEq/L前後のやや高値(日本透析医学会統計調査データベースを使用したコホート研究では、血清Mg濃度2.8~3mEq/Lの方が最も心血管死亡リスクが低い結果でした)の方で生命予後良好(長生き)の報告が複数なされており、低Mg血症は、低K血症と共に不整脈の原因となることが指摘されています。

 

透析患者様において毛髪Mg濃度が高い程、心臓における壁の厚さ(左室後壁厚、心室中隔厚、相対的左室肥厚)が低値(左室肥大が軽度)であったとの報告(OchiAkinobu, etal: CirculationJournal. 77(12): 3029-36, 2013)が大阪市立大学よりなされています。47人の血液透析患者様にて、酢酸カルシウム(Ca)投与と異なり、首の動脈(頸動脈)壁の厚さ(IMT:内中膜複合体厚)がクエン酸Mg投与で有意に改善したと報告(TurgutF,etal:IntUrolNephrol.40(4):1075-82,2008)されています。

 

血液透析患者様対象の研究で低Mg血症が心臓の僧房弁や末梢血管の石灰化と関連することも報告されています。欧州を中心に海外で使用されているFermagate®というMgと鉄を含むP吸着薬は、消化器系の副作用が少なく、Ca負荷が無い利点に加え、Mgを含むため血管石灰化の抑制にも有効な可能性があります。

 

以上より、心血管イベントが抑制される可能性が考えられ、当院では下剤の酸化Mgを必要に応じ血清Mg濃度の上昇に注意しながら、少量投与を行っております。2015年末35%の方に平均259mg/日(100~660mg/日)投与しており、投与中の患者様における平均血清Mg濃度2.78mEq/Lで投与されていない患者様における平均血清Mg濃度2.52mEq/Lでした。

 

不整脈や石灰化を予防し、良好な生命予後を目指す観点からは、Pを低下させる十分な透析と共にMgの多い食事摂取や酸化Mg少量内服継続をお勧めいたします。